2006/01/19
小説執筆に必要な知識(最終回)
CM運営チームの秋人です。
さて、五回に渡って綴ってきた本稿ですが、今回が最終回となります。
ここで、今までのおさらいを行い、必要な知識とは何か? と言う本稿のテーマをまとめてみましょう。
まず、既にご覧になっている通り。小説に必要な知識はどんな描写をするか、或いは人物・風景描写をどのように行い、 基礎と応用の境目となる部分に役立つ知識とは? と言った話がありました。
それぞれを端的におさらいしましょう。
風景描写
背景描写: 人物の主観に影響されない、周辺風景に関する描写
情景描写: 人物の主観に基づいた、周辺風景に関する描写
あると便利な知識として、映像制作分野に関するものを挙げることが出来る。場面転換や、カメラワークを理解し視聴者
(執筆に置き換えるのであれば読者) にどのような画面を見せるのか。これについて理解を深めることで、
臨場感や雰囲気を伝えやすくなる文章を作る手助けとなる。
人物描写
大前提として: 人物像や動作・仕草は書けば書くほど明確になるが、書けば書くだけ読者に伝わる全体の情報量は減ってゆく。
それを踏まえて: 人物に関するどの描写を切り捨て、或いは書き込むかに気を付けなければならない。
この際、有用と思われる知識として心理学や色相学が役に立つ。また、演劇における演出や絵画に関する知識があれば、
強調すべき点やその逆についての感覚が掴める。
文章基礎と応用
基礎知識: 義務教育課程の国語。執筆ジャンルに関する知識、そしてそれと正反対の知識。
応用知識: 広く執筆で再利用可能な知識。
基礎の部分については言わずもかな、と言った感じではある。応用に関しては各人によって異なる。例を挙げるならば、世界の地理や歴史、
或いは自国の六法、天文学や基礎科学、音楽や宗教文化などがそれに当たる。
これらは、筆者が独断と偏見でセレクトしたものではありますが、それなりの根拠はある訳です。巷にある創作支援サイト、
或いはセミプロの作品などでしばしば語られる厳格な作法や、或いは必要と列挙された気が狂いそうな知識量を吸収すべしとのアドバイス。
それには確かに価値がありますが、言わば作品の発想や組み立てでどの程度役に立つと言えるのでしょうか。
執筆に必要な知識とは、この場合。如何にして自分の作品を作り上げるか。それには最も必要な知識として何が必要なのか。
つまり、必要な知識とは、土台の部分で必要な知識のことです。
この文章を見て、こんなに沢山の知識なんて身に付くはずはない。そう考えている読者も多いはずです。ですが、 本稿のまとめ部分を見てください。基礎知識・応用できる知識、人物・背景描写の要点は書かれています。
これだけを読んでも大分、参考になると思われますし。後に続く必要ではないかと書かれた物を、三日で覚えろとは誰も言いません。
本稿読者が締め切り前の作家で無い限り、その習得を急ぐことはありません。まずは、本稿を足がかりに書いている物を一度見直してみる。
そして、何か足りなければその分を確実に補充していけばいいのです。
文章創作は、書く辛抱さえあれば誰でも書けるんじゃないの?
筆者の友人は、絵描きと文章書きの中間を行っていたのですが。これには大きな誤解とある意味での正解があります。小説は、
単に絵を文章化する作業でもなければ辛抱していればどうにかなるものではありません。
極めて理性的かつ非常に感傷的なプログラムのようなものと言えます。
そう言ってしまうと、大変な努力と才能が必要と思えてしまいます。
一方で、小説は義務教育課程の国語で容易に、自身の世界を表現できる最も気軽な方法であることも事実です。文字が存在し、
世界がその存在を許す限り小説は人が自分の内面や願いを表現する優れた方法であり続けるでしょう。
その中で、必要な知識は常に変化して行きます。
本稿では、主に描写に関わる部分で必要となる知識についてピックアップしてきましたが、
本来はそれこそ無限に知識を吸収し続ける必要がある訳です。その習得は、容易ではありません。しかし、それを怠らず書き続けることで、
書く作品は何倍も魅力的になるでしょう。
全五回にわたった本稿ですが、これにて終了です。
また読者として、或いは書き手として諸氏とお会いできることをたのしみにしつつ。
(小説執筆に必要な知識 完)
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