2022/06/10
日本にとって都合の良い露宇戦争の結末
――2022年02月24日、かねてからウクライナ国境線近くに展開していたロシア軍が、一斉にウクライナに雪崩れ込んだ。
二十一世紀に入ってからの大国同士の正規戦であり。両者ともに航空優勢が取れないまま、戦力をぶつけ合う。一つ間違えれば、連鎖反応を起こしかねない。そういう戦争だと言われている。もっとも、ロシア国内向けには「特別軍事作戦」と説明している。これは「戦争」と定義してしまえば、ジュネーブ諸条約などに縛られるため「戦争」にしたくないと言う思惑もある。
戦時国際法に多く違反し続けるこの大規模紛争(何せロシアが戦争と認めていないので、紛れも無い戦争なのだが、ここは紛争と書く)だが、その落としどころ次第によっては、わが国。つまり日本にとってありがたくない結果となる。
では、私達にとって不都合な結果とはどのようなものだろうか。それは……
・ロシア軍が圧倒的な勝利をもぎ取り、ウクライナの領土の数分の一がロシア領になる
言うまでもなく、今回の侵攻は経緯はどうあれ。その目的は「地図の塗り替え」に他ならない。侵攻当初、中華人民共和国と朝鮮民主主義人民共和国が熱烈にロシアを支持した背景を紐解くと。中国は、台湾(中華民国)を併合する口実になるから支持。北朝鮮に至っては、休戦状態にある朝鮮戦争を再開することが出来る。
しかし、こいつらが調子に乗って困るのが日本という国だ。朝鮮戦争の再開そのものは大した影響はないだろう。
一方で、中国軍が台湾に大規模侵攻を行った時、何が起こるかと言うと米国の本格介入。場合によっては、台湾亡命政権が日本に落ちのびてくる可能性すらある。そうなると、日本が戦禍に包まれることは最早確定事項になる。これはいかにもマズイ。
・ウクライナ軍が押し返し越境。ロシア軍が戦術核兵器を使っちまう
誰しもが恐れ、ロシア政府首脳陣がプルプルしながら「NATOが押しかけて来たら、それはつまり……そう言うコトだよ!」と言ってやまない核兵器。広島・長崎の壊滅を以って、数百倍の威力を持った核兵器をロシアを含め、G7各国も持っている。一度核がぶん投げられた暁には、そりゃ誰しも躊躇する理由がなくなってしまう。
北朝鮮も中国もノリノリで核戦力を拡充している現在。ロシアが戦術核を使用してしまえば、七十年以上実戦で使われることが無かった核兵器の引き金はゆるゆるになるに相違あるまい。
流石に、北朝鮮やら中国やらがポップにぶっ放すとも思えないが、三度目の被爆はごめんだ。そうだろう?
ゆえにウクライナには越境攻撃は程々に、自国領土の防衛と奪還のみに努めて貰いたい。
――では、理想の終戦の形は?
これは、簡単だ。あと一年くらいは、ロシア・ウクライナが通常兵器と兵力でつぶし合い。平等に衰退してくれることである。
それでいて、ウクライナには、東部諸州を奪還し、統治権を回復。ロシア軍は、併合済みのクリミアで満足し。その辺りが落としどころになるだろう。この結末に落ち着けば、地図を塗り替えるには建前だけでも住民投票が必要なことが再確認される。ついで、ウクライナが東部諸州を奪還することで、戦力をもって領土を拡大することは出来ないのだと言う……中国・北朝鮮への強力なメッセージになる。
私達が、浸かっている半径数メートルのぬるま湯がごとき平和を、そのまま守るためには、外国人の尊い犠牲がある程度必要なことを、我々は知った上でふてぶてしくしていなければならない。
著:藤 秋人 2022/06/10