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ハードボイルド・エヴァーガーデン

俺の名は、ヴァイオレット・エヴァーガーデン……通りすがりの自動手記人形さ。

 今日も、郵便社の自席で手紙を代筆する日々。

 そう……何処かのロマンティック野郎が、タイピストのことを「自動手記人形」とか言い出したのが全ての元凶。
 以来、俺達みたいなのはドールと呼ばれるようになった。

 これがケチのつきはじめさ。

 アイという言葉がトンと分からなかった幼い俺も、今だ生死も分からぬ少佐殿……ギルベルト少佐……コイツのことを考えると肺やら心臓のあたりがキュウっとなるようになった。よもや、気胸や心臓病ではあるまいな。そう同僚に言うと爆笑された。イマイチ解せねぇ。ただひとつ薄っすらと分かってきたことがある。今生の別れをも覚悟したあの作戦の日、少佐が言った「アイシテル」こいつを、今の俺は少しだけ分かる様になった。

 アイツのことを考えると正直、制御が効かなくなる。ブチ取れた腕の代わりに据え付けられた冷たい機械の義手が、あらぬ方向に動きそうになって大層焦る。部屋の中の物をぶん投げて、俺は叫ぶ。

「どうして、どうして、どうしてなのですかっ!」

 えっ……キャラが違う? そりゃあ、お前。俺、女だもの。戦災孤児を拗らせてチャイルドソルジャーやってた頃から、俺は俺だった。ところがそんな俺を引き取って、前線に駆り出したかと思えば。作戦の合間合間に、読み書き算盤、言葉遣いのイロハニホヘトを仕込んでくれたのが件の少佐殿だった訳よ。
 果たして、俺の口からは「私は」と出る様になり「お客様がお望みであれば何処へでもお伺いします。自動手記人形バイオレット・エヴァーガーデンです」とスラスラ出力される始末。

 ホッチンズ中佐……じゃない違う違う、社長も大層この言葉遣いを気に入ってらっしゃる。同僚のウケもいい。
 なら、こんな煙臭い喋り方なんてやっても中々上手くいかないだろ。それにな、意外と美少女らしいぜ、オレ。

 まぁ、そんな話は良いんだ。

 「アイ」について考えれば考えるほど、少佐の「アイシテル」を思い返す度。俺の制御はどんどん利かなくなった。
 無性にアイツに会いたくなった。

「少佐は……少佐はどちらにいらっしゃるのですか。お元気なのでしょうか、それとも何処かで傷を負っていらっしゃるのでしょうか」

 オイオイ、やめてくれよ。本当にどうにかなっちまいそうで、走って、走って。遂に奴さんの墓に辿り着いたとき、溢れてきたのは涙だけだったって訳よ。理解できない自分自身、そしてどうしようもない現実。それでも、脳裏からこびりついて離れない呪いの言葉。

『愛してる』

 俺は、頭を抱えた。何日も郵便社にある寮の中で頭を抱えた。処理しきれない思いの丈をタイプしまくった。
 でも、なにも変わらねえ。ギルベルト少佐は、俺を抱きしめてくれない。胸のブローチと同じ色をしたあの優男の目、幼い自分に伸ばされる手すら取ることが出来なくなってしまった、機械の義手をつけた俺。

 そりゃあな、前の戦争で散々殺しまくったんだ。ある意味、この結果はなるべくしてなったのかも知れねえ。最終決戦のあの夜。少佐と最後に交わした言葉。脳内麻薬が回っていて分からなかったが、両腕ブチ取れて少佐引き摺ってた俺は、あの時死んだんじゃないか? そう思っても仕方がないくらいの出血だった。

 ただな、黙って聞けよ。この機械の義手は中々役に立つ。少なくともギルベルトを咥えて引っ張ってた夜の戦場の不便さから比べれば雲泥の差なんだよ。そう、この義手こそ、我が戦争の記憶、闘争の記憶、そして少佐との別離はたしかにあった。薬キメて今も軍病院でボーっとしているカカシじゃねえって事がハッキリわかる。

「アイシテルを知りたいのです」

 そう、ぶち上げて。沢山の手紙を書いた。人間ってのはどこまでも不思議だ、俺の義手は何日かに一回機械油を差してやらないと動かす度にジジイがファックする時に出すような掠れた声を挙げやがる。だから、手入れは怠っちゃいけねえ。そんなオンボロだよ。だが、その義手を通じて俺が代筆する手紙で、涙腺が決壊する奴がいる。去り行く自分の意志を遺す奴もいた。

 いつしか俺は、ライデンシャフトリヒでも有数のドールとして認知される様になったよ。
 驚きだね。

 知らずの内に、俺の心の中で「アイシテル」は「愛してる」に変わっていたことに気付いた。
 だが、全ては手遅れだ。もうギルベルトはいねえ。少なくとも、ここには。

 ただ墓には遺体はなかった。

 行方不明なのだそうだ。軍の奴等も大概使えない。そう考えると、まだほんの少し、ともし火程度の希望がある様に思えねえか。

 希望的観測? そうだよ。思い出に縋ってる? そうだよ。

 俺がギルベルトの事を愛してる? ……かもしれねぇ。いまなら少しだけ分かるのさ「アイシテル」ってやつが。

 ああ、俺のことが知りたい?

 散々喋ったつもりだが、まだ聞き足りないのか。俺の名はヴァイオレット・エヴァーガーデン。通りすがりの自動手記人形さ。

 おっと、列車が発車する時間だ。またお前とも、どこかで会えるかもな。手紙を代筆して欲しいならC.H郵便社のヴァイオレット・エヴァーガーデン宛に電話を掛けな。

「お客様がお望みであれば、どんなところにでもお伺いします。自動手記人形サービス。ヴァイオレット・エヴァーガーデンです」

 こいつが聞きたいんだろ。分かってるよ。
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げのくら ~Genome Classic~ ってなに

げのくらってどんな集まりなの?

genokura.png
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 はい、こんにちは。創作ユニット「Genome Classic(ゲノムクラシック)」または「げのくら」の、藤 秋人(@akihito_fuji)です。

 一個前の記事にて、当ユニットのマスコットキャラ「あびるちゃんですこんにちは」で語られたとおりです。

 それ以上のモノは、おいおい足したり引いたりしていくことになるのでしょう……たぶん。

 私と、近藤商会@開発室さん(@ponpokoponM3)の二人で、文芸をひとつやっていこう。そういう趣旨で始まったのが、この「げのくら」になります。

 ちなみに、正式に発足したのは昨日で。動き出したのは今日になります。

――昨日の今日動き出した創作ユニット、それが私達「げのくら」なのだ!

 じゃあ、なんで始まりが二〇〇五年なの? ここからは完全に余談なのですが、前振りが気になる人もいますよね。

 このブログ「げのくら」ですが、以前は「日報げのくら」という名前でした。その頃……近藤さんと私と数名でブログURLにも書いてあるCulturemakerという総合創作サークルをやっていました。

 そこで定期的に流していた広報紙と、広報メールマガジンの名前が「Genome Classic(げのむくらしっく)→げのくら」というものでした。

 今でこそ、私は東京都内某所に。近藤さんは札幌市某所と別々の場所に住んでいますが、元々は同じ札幌市内に住んでいました。

 ちょうどその頃、北海道大学(所在地:北海道札幌市)がポストゲノム研究所と言う施設をボーン! と建てたわけですよ。

 サークル名が志高いことに「Culture=文化 Maker=作る者」とやたら高尚だったので、件の研究所の名前にあやかって「遺伝子の奥底にある潜在的な創作意欲をうんぬんかんぬん……」と。案を出したのは私だった気がするのですが、それに意味づけを行ったのは、当時のコアメンバーだったような気がします。

 今は、私と近藤さん二人になりました。しかし逆に、あの頃からこの二人が高校時代から「比較的、創作や文芸。表現活動に熱心だった」というのが今日まで続いた結果。「ひとつまた組もうぜ」となり。このブログを「げのくら」と改め、再出発したというのが実情です。

あびるちゃんmini

 ちなみに、このあびるちゃんの様に文芸に狂ってる時は常時二人ともこんな感じなので、対戦よろしくお願いします。面白いもの書いていくよ!

あびるちゃんですこんにちは

あびるちゃんmini
こんにちはあびるちゃんです
わたしはぶんげいのあれです あれ ぶんげいそのものです
まんねんひつでかくのです わたしは あびるです
いまじぶん ぶんげい をやるひとは くるってる とかいわれかねませんが ひてい はしません
かくのです かくのです げんこうを つみあげて くずして みち にするのです
かかずば みちには ならないのです
あびるちゃんです ぶんげいのだーくさいどです
あびるちゃんです ぶんげいのたいこをたたくのです
あびるちゃんです ぶんげいのとびらをひらくのです

くらえ まんねんひつ あたつく

ぺんはけんよりもつよいのです

ぶすぶす

今朝の肉(コラム)

カテゴリ「肉」 それは深い深い意味が


ない


18年くらい前に自分がほざいたことらしい。

 今回ゲノムクラシック「げのくら」の再起動にともないこの肉に関してちょっと考えようかなと思う。
 そもそも、ふぐの話しからスタートしていて。なぜに人類はふぐを食おうとおもったのか? 的な、意味合いを含んでいる。
 人間が生きるのを満たすならあんな危険なものは食わなくて良いのだ。
 でもたべる。それがこの土地に生きるもののさだめだろうか?

 しかし僕がいる場所は北海道なので、ふぐ屋さん、は余り見かけない。たぶんあるのだろうけど、僕は平民なので高級料亭系の看板を道端から発見することができないのだ。

 なので、食文化の複雑化は文化そのものの高文脈化なのではないか?

 北海道には高文脈。つまりA級グルメの類があまりない。B級が多いのです。
 イタリアンでもやっぱりB臭いのだ(良い意味でね)
 フレンチのレストランはあるにはある。けど庶民派としては遠い感じがする。

 北海道は観光地として隆盛きわまる。
 タワーマンションはどうやら内地の金持ちどもがたまのやすみにこっちに来てすごすセカンドハウスらしい。
 そこに地元の人間としてはなにか肉感がないのです。実体感がないのです。

――それが「肉」です。

 色々かいたけど、当ブログ共著者の藤氏の夢の中で僕が振り返りざまに「肉」といったのが発端らしい。意味不明だ。