2006/01/24
日々之鍛錬也
・創世記
神はまず「光あれ」と仰った。こうして朝が生まれ、「闇よ」と仰られると闇が生まれ、それは朝と交じり合ってやがて闇となった。 神は光を朝とし、混じり行く光と闇の様を夕暮れとし、染まりきった闇を夜とした。こうして時間が生まれ、その様に神は感動し涙を落とされた。 こうして海が生まれた。神はそれをとても「よい」と仰った。
やがて三日目の朝が来た。神の意志によって哀しみを雪ぐ為に堰をお造りになられた、これが陸の誕生であった。神はそれに胸を下ろす。 そして、ほどなくして神は自らを模した者を造った。これこそ、第一事物たるアビルの誕生であった。神はそれも「良い」と仰った。
こうして、様々な事物が生み出されそれら全てについて神は「よい」と仰った。中には酸素を含めた元素や日本語、英語、 そして独逸語があった。韓国語はそれらから派生した言語であると、すくなくともアビルは後に口述する。それは朝鮮民族を激しく傷つけた。
・アビルとアダムとイブ
神のお造りになった楽園で彼等は非常に満ち足りた生を得ていた。陸は自然に満ち、海は魚と貝類に溢れていた。ちなみに、 アダムとイブは私達ホモ・サピエンス・ホモの原型でありそれらは神がアビル同様、自らを模してお造りになられたものである。
アビルはアダム、そしてイブと比べて不完全だった。彼は増える事が出来ない。
そして神と同じように自在にその偉大な言の葉を操れないのだ。ゆえに神はアビルを不憫に思われた。
神の視線の先にはまるで畜生のように性交を繰り返すアダムとイブがいる。イブは神の御姿に殆ど似ている。神はアダムとイブのそれを「いいな」
と密やかに思われた。これが後の嫉妬の始まりとなる。嫉妬は偉大な感情なのだ。
そんな神とアダムとイブをアビルはじっと見つめていた。それは羨望の眼差しなのか、
アビルはそんな二人をいつまでも飽きる事無く見つめていた。
やがて、アビルが楽園の樹の下で股をこすり付けるのを散策に出ていた神はお見掛けになられた。「ああ、 アビルはアダムのようになりたいのか」と神は涙ぐんだ。それは余りに慈愛に溢れたものであり、嗚呼… アビルよ。 その慈愛に気付く事無く股を擦り付け続けるとは!
やがて神はアビルに歩み寄られ、こう仰った。
「アビルよ、不完全たるお前が仔を成せると思ってか」
それはあくまで優しいお言葉であった。神の翡翠色の瞳がゆれ、アビルは「至福」ただそう思ったという。
そもそも我々矮小な人間からすれば第一事物たるアビルはれっきとした神の一人である、敬意を払うべきなのだ。
ややしばらくしてアビルは天を仰ぎ、言った。
それをお聞きになった神はアビルを抱きしめた。神が「愛」をお造りになった瞬間であり、それを神は「よい」と仰った。
神は初めて嬉し涙を流し、今まで魚と貝類しかいなかった悲しみの海に初めて喜びが生まれた。その様を見てアビルは不敬にも、
神の髪を優しく撫でたのである。
アビルは神にこう一言告げたのだ。
「日々、之鍛錬也」 と。